ウブロには伝統的な時計ブランドにはない独自性がある。個性的なデザインが目を惹く一方で実用性にも優れており、現在では多くの時計愛好家から高い評価を獲得。ウブロの歴史を紐解き、その魅力を探るとともに、代表的なコレクションを紹介しよう。
新興ブランド「ウブロ」が急成長した理由
業界の異端児だったウブロは、21世紀に入り一気に屈指のトップブランドへと成長した。世界中から支持されるようになった理由に迫る。
「時計業界の異端児」と呼ばれた歴史
ジャン-クロード・ビバー
時計ビジネス成功請負人として、数々のブランドを成功に導いてきたジャン-クロード・ビバー。2004年にウブロのCEOに就任し、14年にはLVMHグループ ウォッチディヴィジョン プレジデントに就任。18年に同ディヴィジョンの会長となり、以降はアドバイザーの役割を担うと発表した。
ウブロは高級時計ブランドの中でも比較的歴史が浅く、1979年にスイスのニヨンで誕生。創業したのは、イタリアの時計・宝石メーカー「ビンダ」創業者一族のカルロ・クロッコだ。
1980年に発表したブランドのデビュー作「クラシック」は、斬新なデザインで業界に大きな衝撃を与えたが、スイス高級時計の常識から逸脱したクリエイションは万人受けするものではなく、ウブロは業界から異端扱いされることになる。
経営も次第に傾いていく中、困難な状況を打開するため、ウブロは2004年に新たなCEOとなる人物を迎え入れた。
ヴァシュロン・コンスタンタンと並んで長い歴史を誇る時計ブランド、プランパンを見事に復活させた、ジャン-クロード・ビバーである。
成功者の証というステータスシンボル
ビッグ・バン スチールセラミック
2005年に発表された「ビッグ・バン スチールセラミック」。ビス留めのベゼルやケース左右に張り出したベゼルラグなど、1980年から続くブランドのDNAを継承しつつ、モダンなデザインへとアップデートさせた傑作だ。自動巻き(Cal.HUB4100)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径44mm)。10気圧防水。158万4000円(税込み)。
新CEOに就任したジャン-クロード・ビバーは、2005年に発表した「ビッグ・バン」でブランドの知名度を世界レベルに押し上げた。数々のメゾンを復興させた時計ビジネス成功請負人としての実力を、ウブロでも発揮してみせたのである。
多彩なパートナーシップ戦略によりブランドイメージを広く定着させたことも、ビバーの大きな功績だ。ファッションやスポーツ、アートなど、各分野をけん引するリーダーたちがウブロの時計を愛用している。
こうしたトップアスリートや有名アーティストを広告塔として起用することで、いつしかウブロは「成功者の時計」と呼ばれるようになった。新興ブランドでありながら、現在は著名人のステータスシンボルとなっている。
ウブロだからこそ味わえる魅力とは?
ウブロが多くの時計愛好家から選ばれる理由を探っていこう。とりわけ他ブランドとは一線を画すデザインやハイスペックな自社製ムーブメントが、ウブロの大きな魅力である。
舷窓からインスピレーションを得たベゼル
クラシック
ウブロのデビュー作となった1980年発表の「クラシック」。舷窓をモチーフとしたデザインにラバーストラップを組み合わせた、当時としては斬新すぎるルックスのスポーツウォッチは、時計業界で大きな話題となった。
ウブロの時計における特徴のひとつが、舷窓のようにビスを打ち込んだベゼルだ。メゾンを象徴するディテールとして、多くのモデルに取り入れられている。
「HUBLOT(ウブロ)」とはフランス語で舷窓の意。それはアイコニックな意匠であるとともに、社名の由来にもなっているのだ。
1980年に登場した「クラシック」は12カ所にビスを打ち込んだデザインだったが、「ビッグ・バン」の誕生以降は6カ所にリデザインされた。左右に張り出したベゼルラグも、ウブロの伝統を表す特徴である。
新素材を採用した独創的なデザイン
マジックゴールドマジックゴールド
2011年にウブロが発表した革新的マテリアルが「マジックゴールド」。世界初にしてオンリーワンの18Kゴールド合金で、優れた耐傷性を有するのみならず、時間が経過しても上品な光沢を放ち続ける特性を持つ。
業界の常識にこだわらない独創性の高いデザインも、ウブロが持つ魅力のひとつだ。異素材の組み合わせや独自素材を積極的に取り入れ、唯一無二の時計を生み出し続けている。
1980年に発表された「クラシック」は、ゴールドとラバーを融合させるという業界初の試みがなされたモデルである。当時は異端扱いされたこの組み合わせは、今や「ビッグ・バン」をはじめ、ウブロ時計が持つ大きな特徴となっている。
ウブロが特許を取得している「マジックゴールド」は、マニュファクチュールが開発した世界で唯一の合金だ。耐傷性が低い既存のゴールドに独自の工夫を施し、輝きを保ちやすい金素材を生み出している。
時計愛好家も評価する自社製ムーブメント
ウニコ
左が4年の歳月をかけて開発した初の自社製ムーブメント「ウニコ(Cal.HUB1242)」。これは、フライバック機能を備えたクロノグラフムーブメントで、パワーリザーブは約72時間を実現する優れた性能を有していたが、2018年には「ウニコ2(Cal.HUB1280)」を発表。スモールサイズモデルへの搭載を想定してデザインされ、その基本性能はウニコを継承しつつ、ムーブメント厚は約1.3mmもスリムになった。
ウブロの魅力はデザインだけではない。ムーブメントもかつては他社製を採用していたが、近年は自社製ムーブメントの開発にも注力している。
中でも評価が高いのが、ウブロ初の自社製ムーブメント「ウニコ」だ。伝統的な手作業に最新のハイテク自動化技術を組み合わせて開発された。
双方向自動巻き上げ機構を備え、パワーリザーブは最大約72時間を実現。新しいタイプの自動巻きクロノグラフムーブメントとして「ビッグ・バン」にも搭載された。
ウブロの代表的なコレクション
メゾンの発展を支えるビッグ・バンを筆頭に、ウブロからは数多くの時計が登場している。代表的なコレクションとそれぞれの特徴をチェックしておこう。
ウブロのアイコンモデル「ビッグ・バン」
ビッグ・バン ウニコ チタニウム セラミック
ケースにチタニウム、ベゼルにブラックセラミックを用いた、革新素材の“フュージョン”によって作られた「ビッグ・バン ウニコ チタニウム セラミック」。ビッグ・バンの特徴的なデザインはそのままに、よりモダンでクールなルックスに仕上げている。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ti(直径44mm)。10気圧防水。232万1000円(税込み)。
ウブロ時計の中でも屈指の人気を誇っているモデルが「ビッグ・バン」だ。ブランドの窮地を救っただけでなく、ウブロを世界屈指のブランドに押し上げるきっかけともなったコレクションである。
ビバーが打ち出した「フュージョン」をコンセプトとし、伝統的な素材と先進的な素材を融合させている点が大きな特徴だ。そのうえで、ベゼルのデザインにはブランドの個性が継承されている。
2005年に誕生して以来ビッグ・バンは瞬く間に人気を集め、ウブロのフラッグシップコレクションとなった。多くの著名人が身に着けていることから、成功者の時計としても名高い。
優雅さと斬新さの融合「クラシック・フュージョン」
クラシック・フュージョン キングゴールド グリーン
「クラシック・フュージョン」のシンプルなデザインに、18Kキングゴールドのケース&ベゼルと、落ち着いた雰囲気のグリーンダイアルを組み合わせた「クラシック・フュージョン キングゴールド グリーン」。多彩なラインナップの中でも印象的なコンビネーションのひとつ。自動巻き(Cal.HUB1110)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18Kキングゴールド(直径42mm)。5気圧防水。239万8000円(税込み)。
1980年、ウブロは舷窓に着想を得て製作した「クラシック」を発表。「クラシック・フュージョン」は、ブランドの原点となったタイムピースを現代風にアレンジしたコレクションだ。
高級感あふれる優雅な雰囲気に、ウブロらしい斬新で華やかな要素が加えられている。多層的なビッグ・バンと違い、シンプルでスリムなプロポーションによりドレッシーな佇まいが印象的なコレクションである。
豊富なバリエーションから選べる点も魅力といえるだろう。デザインや素材、カラーが多彩であることに加え、ムーブメントの種類も多岐にわたっている。
異彩を放つ存在感「スピリット オブ ビッグ・バン」
スピリット オブ ビッグ・バン チタニウム
ケースとベゼルにサテン&ポリッシュ仕上げのチタニウムを採用。オープンワークのダイアルと組み合わせることで、力強くも洗練された表情を見せる「スピリット オブ ビッグ・バン チタニウム」。トノー型のケースを用いながらも、ひと目でウブロのタイムピースと分かるデザインワークが「スピリット オブ ビッグ・バン」の魅力だ。自動巻き(Cal.HUB4700)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ti(直径42mm)。10気圧防水。251万9000円(税込み)。
独自路線を貫くウブロの中でも、特に異彩を放っているモデルがビッグ・バンのハイエンドライン「スピリット オブ ビッグ・バン」だ。
最大の特徴はウブロ初のトノー型(樽型)ケースを採用している点で、多層構造のケースには異素材や異文化のぜいたくな融合が具現化された。
品格を備えたエレガントなモデルから複雑機構が搭載されたメカニカルなモデルまで、個性あふれる時計を次々と世に送り出しているコレクションである。
愛好家から支持されるウブロの人気モデル
ウブロの代表コレクションから、それぞれの人気モデルを紹介する。魅力や特徴を知るほどにウブロへの興味も高まるだろう。
ビッグ・バン ウニコ チタニウム Ref.421.NX.1170.RX
ビッグ・バン ウニコ チタニウム
ビッグ・バン ウニコ チタニウム
自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ti(直径44mm)。10気圧防水。220万円(税込み)。
「ビッグ・バン ウニコ チタニウム(Ref.421.NX.1170.RX)」には初代ウニコの性能を引き継いだ自動巻きムーブメント「ウニコ2」が搭載されている。最少サイズのクロノグラフに合うよう作られたウニコ2は、ムーブメント厚6.75mmの薄型化を実現している。
ムーブメントのコラムホイールをダイアル側から眺められる、ユニークな構造が特徴だ。メカニカルな意匠とサテン仕上げチタニウムのケース&ベゼルが相まって、より男らしさをアップさせられる時計である。
また、ケース素材のチタニウムは軽量かつ腐食耐性に優れていることに加え、アレルギーを誘発しづらいとされているため、肌が弱い人でも安心して使えるだろう。
クラシック・フュージョン チタニウム Ref.542.NX.1171.RX
クラシック・フュージョン チタニウム
自動巻き(Cal.HUB1110)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Ti(直径42mm)。5気圧防水。84万7000円(税込み)。
ウブロのデビュー作となった、1980年誕生の「クラシック」を再解釈して作られたモデルが「クラシック・フュージョン チタニウム(Ref.542.NX.1171.RX)」だ。伝統的なエレガンスとウブロらしい大胆な迫力を併せ持っている。
ムーブメントには約42時間のパワーリザーブを備える自社製のCal.HUB1110を搭載。ケースサイズはスタンダードな42mmとなっている。
ウブロのクラシック・フュージョンには、42mm以外に45mm、38mm、33mmのケースサイズも存在する。型番の最初に付けられた3桁の数字が、ケースサイズにより違うことも覚えておこう。
スピリット オブ ビッグ・バン キングゴールド Ref.642.OX.0180.RX
スピリット オブ ビッグ・バン キングゴールド
スピリット オブ ビッグ・バン キングゴールド
自動巻き(Cal.HUB4700)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。18Kキングゴールド(直径42mm)。10気圧防水。471万9000円(税込み)。
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「スピリット オブ ビッグ・バン キングゴールド(Ref.642.OX.0180.RX)」は、特徴的なトノーケースを備え従来のビッグ・バンとは異なった表情を見せる時計である。搭載されたCal.HUB4700は、伝説となっているゼニスのキャリバー「エル・プリメロ」の流れを組むムーブメントだ。
キングゴールドのベゼルに打ち込まれたビスは、ウブロの象徴ともいえる舷窓をイメージさせる。ムーブメントの構造を顕にしたオープンワークダイアルを採用することにより、伝統と斬新さを見事に融合した1本だ。
キングゴールドはマジックゴールドと同様に、ウブロが誇る独自の合金素材である。銅とプラチナを通常より多めに配合しているため、経年劣化が起こりにくいのも特徴だ。
ウブロには新時代を切り開く力がある
かつて時計業界の異端児と呼ばれていたウブロは、成功者が身に着けるブランドと称されるまでに成長した。独創的なデザインや自社製ムーブメントが、ウブロ時計の大きな特徴だ。
「ビッグ・バン」や「クラシック・フュージョン」など、バリエーションの豊富さもウブロならではである。数ある中から自分に合う1本を選び、新時代を切り開く力を体感してみよう。